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ガメラ7

(特別寄稿)朝鮮女子勤労挺身隊訴訟・原告被害者のドキュメント番組

    ~支援者として取材を受けて~


         不二越強制連行訴訟を支援する連絡会事務局 中川美由紀



 昨年から今年、地元テレビ局2局が制作した不二越女子勤労挺身隊のドキュメント番組が放映された。KNB制作の放送ふるさとスペシャル「法と恨 朝鮮女子勤労挺身隊の戦後」(55分 富山県内) が2019年5月、これを編集したNNNドキュメント「不信の棘 "徴用工"と日韓の行方」(55分全国放送)が同年11月深夜に放映された。また、2020年2月に予定されていたTBS報道特集「朝鮮女子勤労挺身隊~苦難の人生」(25分 チューリップテレビ制作)はコロナの首相緊急会見のため延期され、6月に亡くなられた拉致被害者家族の横田滋さんのドキュメントとセットで6月に放映された。これを編集し、8月に富山で45分番組として放送予定だ。

「被害者の生の声を伝えたい」

 一昨年、韓国で新日鉄、三菱重工の徴用工訴訟の大法院判決が出され、不二越女子勤労挺身隊訴訟の控訴審判決にも相次いで原告勝訴判決が下された。「日韓の緊張関係」が強まる中で、不二越訴訟が全国区となり、当会への取材が急激に増えた。

 記者はどちらも40代。不二越訴訟についてはほとんど知らないに等しい。番組を作成するにあたり、過去の自局のニュースや資料を調べたが、被害者の生の声がほとんどないことに気づく。取材をしたくても被害者は高齢でもう富山に来ることはできなくなっていた。それで原告にインタビューしたいと韓国への同行取材の要請があった。被害者たちの姿と生の声をテレビで取り上げてもらう機会をぜひ生かしたいと思い、取材に協力した。

嫌韓ムード、右翼の圧力の中での放送

 原告は、毎年2月の株主総会に参加して「謝罪と賠償」を経営陣に訴えている。不二越正門前での抗議行動も継続しているが、5年前から右翼の妨害が始まった。北陸の右翼が結集し、何台もの街宣カーで「朝鮮乞食」「日本から出で行け」と大音量でヘイトスピーチを繰り返し、原告や支援者の訴えをかき消そうとする。

 徴用工判決後、安倍首相は強制連行の事実を否定し、徴用工を「募集に応じた労働者」と言い換え、河野外相は韓国を「無礼者」呼ばわりした。そうした政権に勢いづいた右翼は「韓国断交」を掲げた。これまでも右翼は、自虐史観を垂れ流しているとマスコミを攻撃しており、テレビ局内ではこのテーマを取り上げることに緊張があった。また、富山県は不二越の城下町であり、経済界、警察などに影響力があることから、不二越にも遠慮するところがあると聞いた。そして、何より圧倒的な嫌韓の世論に配慮してどういった切り口で番組を制作するのかに苦労していた。

 裁判を支え、原告や韓国の支援者たちと交流を続けている連絡会の私という存在を通して番組を作成したKNBは、日韓条約や不二越訴訟の内容などを解説し、両論併記という形を取りつつ編集していた。チューリップテレビは、被害者の一人に焦点を当て、当時朝鮮で少女たちを勧誘して不二越に送り出したのは日本人教師で、同僚の元教師(富山市在住98歳)の証言を入れていた。

 2局はドキュメント制作で競い合う関係のようだ。事実を知らない人にどのように伝えたらよいのか、取材を受けることを通じて、「当事者の切実な声」と「歴史の事実」を知らせる事の重要性を改めて知る機会となった。       

テレビの影響力

 テレビの影響は大きく、どちらの番組も放送を見た人から「素晴らしい内容だった」と感動の声が多く寄せられた。全く知らない方からも、ブログやメール、電話で激励していただいた。(もちろん無言電話や誹謗のメールもあったが)

 この課題に特に関心を持っている方の中からは、日韓条約の解説が間違っている、不十分という意見も寄せられた。しかし、私は、初めて観た人が女子勤労挺身隊の問題を知り、被害者の姿に涙したことが大事だと考える。政府の「すでに解決済み」という主張に同調する人であっても、被害者たちをこのまま放置しておいていいのか、解決するにはどうしたらよいかと考えてもらえるような番組となっていた。記者の思いは伝わったと思う。

 今の情勢でこんな番組を作ってあの記者は大丈夫かと心配して連絡してきた在日の方もあった。この番組が彼らにどんなに激励となったことか。経済制裁でエスカレートする排外主義に命の危機を感じている在日の現実を日本人は想像できていないと、番組の感想を通じて考えさせられた。

 内容的に不十分なところは私たちが補えばいいのだ。被害者の代弁はできないが、この番組を多くの人に見てもらう機会を設け、世論をつくっていきたいと思う。

 

不二越強制連行訴訟を支援する連絡会

☎   090-2032-4247

Eメール halmoni_fujikoshisoson@yahoo.co.jp







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