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《連載コラム》「沖縄のいま」⑴

琉球新報を購読され、富山の沖縄問題を考える市民グループ「ゆいま~る♡とやま沖縄つなぐ会」の代表でもある小原さんに、不定期ですが、県内メデイアではほとんど報じられない「沖縄のいま」を同コラム欄で伝えてもらうことになりました。今回は、4月に大きな問題となった2つの問題を取り上げています。

国は辺野古設計変更申請を沖縄県に提出

 沖縄防衛局は4月21日、大浦湾側の軟弱地盤改良のため、辺野古新基地建設の設計変更を沖縄県に申請した。新型コロナ禍への対応に沖縄県もまた忙殺されているさなかのことだった。何度も「辺野古新基地NO!」の意思を示している県民からは、沖縄に対する政府の冷酷な仕打ちと受け止められた。

 大浦湾側では、水面下90㍍まで軟弱地盤が続く箇所がある。しかし、防衛省は水面下70㍍までの地盤改良で可とした。現存の機材では水面下70㍍までの地盤改良工事しかできないからだ。防衛省が設置した「技術検討会」は、提出された資料に20カ所のミスがあったにもかかわらず、変更計画案をそのまま了解してしまった。たとえ新基地が完成したとしてもその後の不揃いな沈下への対応は必至だ。

 政府が大浦湾側の軟弱地盤を認め、総工費9300億円、工期は12年かかると試算したことを受け、市民らは「辺野古の工事は不要不急だ。直ちにやめて、辺野古・大浦湾に捨てる血税をコロナ対策へ回すべきだ」と主張していた。海上作業者にコロナ感染が判明し、一部工事が止まっていた。市民らも感染拡大を避けるため、キャンプ・シュワブゲート前や土砂を搬出する琉球セメント安和桟橋と本部(もとぶ)港塩川地区での抗議行動を一時中断していた矢先だった。

 先立つ4月13日に、地元住民らが県の埋め立て承認撤回を国土交通相が取り消したのは違法だとして裁決の取り消しと執行停止を訴えていた訴訟で、那覇地裁は大浦湾側に居住する市民の訴えを原告適格性を認めないとして却下した。しかし、その判決の中で平山馨裁判長は、軟弱地盤は「公知の事実」だと指摘し、設計の変更に際し沖縄県知事の承認を受ける際には「改めて環境影響評価(アセスメント)が実施されるべきこと」との見解を示していた。同様の指摘は以前から環境保護団体や桜井国俊沖縄大名誉教授からも指摘されている。

 23日、沖縄平和市民連絡会は沖縄防衛局の前で申請の撤回などを求める抗議集会を開いた。辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議と県選出の野党国会議員のメンバーらも、設計変更申請を取り下げるよう沖縄防衛局に要求した。市民たちは防衛局へ申請を撤回するよう抗議のファックスを送っている。

普天間基地から有機フッ素化合物が流出 


←写真:

米軍普天間飛行場から住宅地へ流出する泡消火剤=11日午前8時すぎ、沖縄県宜野湾市嘉数(琉球新報から)

 4月10日、普天間基地から泡消火剤の有機フッ素化合物が流出する事故が起きた。基地から排水路を通って流出し、そのまま比屋良川に流れ込み、牧港湾に至った。街中を数十センチの大きな泡が舞い、住宅地を飛び交かい、降り注いだ。PFOS、PFOAなどの有機フッ素化合物は発がん性があり、分解されにくく蓄積しやすい性質から「永遠の化学物質」とも呼ばれている。ストックホルム条約では国際的に製造・使用が制限され、日本でも近々規制値が設定されることになっている。政府は過去に、米軍は代替消火剤に切り替えていると言及していたが、そうではないことが判明してしまった。

 流出した泡を回収しようとしたのは宜野湾市消防本部の消防隊員たちだった。ホースで吸い上げることができず、バケツでの回収作業を余儀なくされたが効果は上がらなかった。米軍は基地外での回収作業をまったくせず、原因者が責任を持つ市民社会の原則から外れている。ここにも日米地位協定の問題がある。

 そんな中、流出した地域を「視察」に訪れた普天間基地司令官は、「雨が降れば収まる」と放言し、市民からは「当事者意識がなさすぎる」と憤りの声が上がった。故翁長雄志前知事ではないが、「うちなんちゅーうしぇーてーないびらんどぅ」と多くの県民が思ったことだろう。

 沖縄では2016年から嘉手納基地周辺の河川や北谷浄水場でPFOSなどの有機フッ素化合物による汚染が明らかになっていた。米軍基地からの汚染が疑われた。だが、事故が起こるたびに日米地位協定の壁に阻まれ、地元自治体は原因究明のための基地への立ち入り調査もできなかった。今回、環境補足協定の最初の適用で、県と宜野湾市と沖縄防衛局の基地内立ち入り調査が実施され、水を採取した。しかし、事故現場の土壌採取は拒まれた。米軍は事故現場周辺の土壌を掘り起こして回収し、日本側の調査を阻んだ。日本側は現場土壌ではなく別の箇所の土壌の採取を許されたにすぎなかった。

 行政とは別に、地元新聞社が泡が流れ込んだ河川の水を採取し、独自に専門家に分析を依頼した。結果は複数の高濃度の有機フッ素化合物が検出された。市民団体も独自の調査を実施する予定だ。民間の意思が行政を突き上げ、また支えている構図が見える。


          (5月Opinion/文責:小原悦子)


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