~路上生活者の特別給付金受給支援についての取材を受けて~
コロナ感染にともなう「特別定額給付金」を路上生活者が受け取るための支援について取材を受け、朝日新聞富山版(2020/7/7)に掲載された。支援の概略と取材を受ける過程で気づいたことを報告する。
10年ほど前から、駅北食堂というグループで、路上生活者や生活保護受給者、低年金の人などに週1回無料で食事を提供し、相談も受けている。特別給付金は住民基本台帳に載っていることが受給条件となっている。住民登録がなければ郵送される申請書を受け取ることができない。現在富山駅周辺の野宿者は2名(Aさん・Bさん)、まずは市役所の相談窓口へ行くことを勧めた。その結果、Aさんには自分の住所に住民登録してもいいという人を探して住民登録し、申請書を再交付してもらって申請するという方針を立てた。身分保証書と銀行口座はあった。簡単に書けばこれだけだが、なぜか申請書の再交付の段階で滞り、市会議員に交渉をお願いした。
野宿の方は個々の条件でなかなか一人では申請が難しい。「全国調査」という支援グループのネットワークがあり、MLで相談を投げかけると、4件の返信があった。うち1件は金沢のグループで、市会議員が「本人保証書」を出し、市がこれを本人確認書類とみなし、窓口で申請して後日現金を受け取るという方法を取ることになったという。
金沢支局の記者がこれを取材、富山の事例も書きたいと私も取材を受けた。富山まで来て、駅北食堂の活動や支援の内容を聞かれ、全国の状況についても知りたいとのことで資料提供した。最近ではメインでなければ電話で済ますことが多いように思う。
取材で、聞かれるままに給付金受給のための支援の実際を話しているうちに、支援を受けている人のプライバシーも同時に話していると気づいた。Aさんには取材のことを言ってなかったし、名前を出さなくても、記事になれば知っている人には誰だかわかってしまう。その後Aさんには取材の経緯を理解してもらい、個人が特定されないように配慮するということで渋々OKをもらった。当事者は「関係性」においても困窮している。取材者には、築いてきた信頼関係を崩さないようにお願いしたい。
受給する当事者に取材できないので、記者は悩みつつ、富山の事例を加え、市議が介在していること、「全国調査」を書き入れて記事の信ぴょう性を高めていた。この記者は10年以上の経験があり、人権への配慮についても理解されていた。そして、誰にでも10万円を受け取る権利がある!支援を受ければ大丈夫!というメッセージを発信したいと思っていた私の願いは、見出し「路上生活者に届け給付金 もらえないひともいるかも」で表現された。Aさんは、「10万円をもらったら、ホテルに泊まりたい」と嬉しそうに言っていた。(7月オピニオン/文責: 堀江節子)
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