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市民のなぜ?に応えたローカル局

更新日:2020年2月1日


輪島での避難訓練を嗤(わら)った北陸朝日放送

「言わねばならないこと

  ~防空演習を嗤(わら)った男・桐生悠々」


東海テレビの「人生フルーツ」に続く

 ローカルを基盤とした企業は胸突き八丁に差し掛かっている。ローカルテレビ局も例外ではない。17年7月に富山・ほとり座でみたドキュメンタリー「人生フルーツ」が東海テレビ制作と知って、劇場放映というこんな活路もあったのかと驚いた。そして、12月30日何気なく見た「言わねばならないこと~防空演習を嗤った男・桐生悠々」に釘付けとなり、最初はNHKかと思ったが北陸朝日放送制作と知り、その流れを汲む動きかと納得した。富山で朝日系列の番組をみるにはケーブルテレビの契約が必要。無駄な出費をと思いつつ、通信との同時配信となれば解消されるが、そうなるとローカル局は更に窮地に追い込まれる。でもこれほどの質の高い番組を作れば、系列局も放映し、映画上映となって劇場で見ることも可能になり、十分に稼ぐことができる。


17年輪島市でのミサイル避難訓練に大きな疑念

 さて、この番組のディレクターで51歳の黒崎正己がその動機を語っている。2年前の夏、輪島市で北朝鮮弾道ミサイルの落下を想定した避難訓練が行われた。政府指示の「物かげに身を隠す、地面に伏せて頭部を守る」訓練を淡々と伝える報道に、こんなバカげたものでいいのか。私たちがまず伝えるべきは、こんな訓練に意味があるのか、本当は誰のための、何のための訓練なのか、そういう問いではないか。そこで桐生悠々にいきついた。


国難というアベ政権の欺瞞

金沢市出身の新聞人であった悠々は信濃毎日新聞の主筆も務め33年8月、軍部の演習を批判した社説 「関東防空大演習を嗤う」で軍部の逆鱗に触れ、信毎を追われる。その後、名古屋に移り、個人雑誌「他山の石」を発行し、度重なる発禁処分を受けながらも軍部の暴走を批判し続けた。番組では、悠々の論説記事を読み直し、現代のニッポンにも通じるその主張の普遍性を訴えている。また、在郷軍人会と特高警察による戦前戦中の言論抑圧の実態を究明するほか、悠々の子孫を訪ね、家族が戦後をどう生きたかも追った。中村敦夫や望月衣塑子の登場も熱意が迸(ほとばし)っていて伝わってくる。


ローカル局の資本から見てみた

 別の側面も指摘しておきたい。北陸朝日放送に北国新聞の資本が入っていない。このことが忖度を生まない自由な制作を許したのではないか。共謀法に新聞界で容認したのは読売と北国・富山新聞の2紙だけだった。その覇権主義が際立っている。その論証ということでもないが、石川県の老舗・北陸放送の資本構成の変化をウィキペディアで見ることができる。ここの創業者は嵯峨保二であり、代々嵯峨家のものと思っていたが、いつの間にか北国新聞が筆頭株主に代わっている。その間何が起きたのか興味深い。北国新聞の闇は週刊誌も手が出せないといわれている。読売新聞も正力、小林家がいつの間にか消えて、渡邊恒雄がオーナー然として君臨するようになった。新聞テレビでは意外にオーナー系の企業が多く、ジャーナリズムがどれほど意識されているか、注目する必要がある。中日新聞もオーナー系で、系列の東京新聞で労働争議を引き起こしているが、東京新聞の左派論調が売れると判断しているふしがある。中日新聞の特派員であった藤村信による「パリ通信」も際立ったレポートだった。


人材が鍛えられていく社風こそ

 コンテンツといわれると戸惑ってしまうが、能登の僻地で起きたJアラート騒動をここまで普遍化し、高める視点で取材し切る能力ある人材をどう育てているかがポイントであろう。ローカル局で苦労している経営者もスタッフもぜひ自覚してほしい。いろいろな社を訪問したことがあるが、受付がポイントだ。社長に会いたいという人にも、記者に会いたいといっても、対応が同じかどうかがポイント。ものすごい形相でクレームをつける人間もやってくるが、その対応である。「受付の多分派遣であろう女性に、何でこんな奴を取り次いだといわんばかり」で、そこの社長にいたっては秘書を怒鳴りつけている。そんな企業のトップは決して矢面に立たない。イエスマンばかりに取り囲まれて、もみ手でやってくる来訪者しか受け付けないのだ。

 報道企業も所詮、トップの人間力で決まる。それが隅々まであっという間に広がっていく。忖度という選別だ。話はそれるが、電力の役員室だ。広々としたスペースに深いじゅうたん。庶民の電気料で賄われ、原価が保障されていて、ほとんど考えることもない経営なのに、何でふんぞり返っているのだ。このぼんくら馬鹿野郎と心底で軽蔑している。社内民主主義とは無縁だ。理想をいえば、受付はもちろんのこと、どんなレベルの社員に会っても、好印象がもたれるそんな社風の報道機関であってほしい。そこでこそ、ひとは鍛えられる。

                       ( 1月Opinion/ 文責:甲田克志)

【2018年8月の北陸朝日放送の公式twitterより】

HABミィーゴチャン【公式 北陸朝日放送】‏ @HAB5ch

20日(月)ひる2時45分〜

『言わねばならないことー新聞人・桐生悠々の警鐘ー』

戦前、軍部の防空演習を「嗤った」ため新聞界を追われた金沢出身の新聞記者・桐生悠々。ペン1本で軍国主義と検閲に抗った男の生涯を通して、現代ニッポンの危うさを描く。



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