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≪コラム≫ 沖縄のいま⑻

更新日:2021年5月20日

市民の「知る権利」を無視して進む戦(いくさ)への道


                               小原悦子


◇宮古島保良弾薬庫 一部供用開始◇

 宮古島城辺保良地区で進められている弾薬庫の一部が完成し、4月1日陸自への供用が開始された。完成したのは陸上自衛隊宮古島駐屯地(2019年3月開設)に配備されている地対艦・地対空ミサイル部隊の弾薬を保管する弾薬庫3棟のうちの2棟。今後、残る1棟と隊員が射撃訓練を室内で行う「覆道射場」などの整備が残されている。

 沖縄防衛局は4月25日、「保良訓練場(弾薬庫)」で地元保良と七又地区の住民を対象に見学会を実施した。弾薬庫から最も近い住宅は約200㍍の距離にある。住民にとっては、保管される火薬類の量を知ることは切実な問題だ。しかし、弾薬の保管量も搬入時期も不慮の事故や有事の際の対応についても、住民の質問に明確な返答は得られなかった。保良弾薬庫反対住民の会の下地博盛代表は見学後、「住民が最も心配すること、重要なものは何一つ明確にしなかった」と防衛局の対応を批判した。弾薬が搬入されればミサイル部隊が実質的に稼働する。車載式地対艦ミサイルは有事の際、島中を移動するという。住民はどうやって避難するのだろうか。

2019年、宮古島駐屯地内に「小銃などの保管庫」と称して、実際は迫撃砲弾や中距離多目的誘導弾などの「弾薬庫」が造成・運用されていた。自衛隊の対応は相変わらずだ。住民の知る権利は侵されている。

4月16日、日米首脳は共同声明に初めて「台湾問題」を盛り込んだ。「台湾有事」は「沖縄有事」である。台湾と与那国島は約110㌔しか離れていない。ちなみに、鹿児島市役所から那覇市役所までの直線距離は約660㌔だ。現在、与那国島―石垣島―宮古島―沖縄島―奄美大島―馬毛島と南西諸島への自衛隊配備が進められている。「防衛ライン」は九州各地の自衛隊基地へと続き、米軍岩国基地、佐世保基地、在沖米軍基地と連動する。辺野古新基地はその一翼としてある。

離島の住民の命を守る手立てもなく、「台湾有事」や「尖閣有事」を喧伝し軍事を優先する。住民の命は考慮されない。日本本土防衛のための時間稼ぎとして沖縄住民の命を「捨て石」にした76年前の沖縄戦。南西諸島への自衛隊配備は沖縄戦の再来としか思えない。


◇ドローン規制法の現実◇

2020年6月改定された「重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律」(ドローン規制法)により、辺野古新基地建設の現状を上空から撮影することが困難になっている。同法第6条により沖縄県関係では、米軍キャンプ・ハンセン、キャンプ・シュワブ、嘉手納飛行場、キャンプ瑞慶覧、普天間飛行場、航空自衛隊那覇基地の6施設が対象防衛施設として指定された。米軍基地関係では全国で15か所が指定されている。これらの基地とその周辺300㍍では、ドローンを飛ばすには基地司令官の同意などが必要だ。

政府は2014年、キャンプ・シュワブ沿岸の常時立ち入り禁止区域をそれまでの50㍍から2000㍍に拡張した。沖縄防衛局が許可した船舶以外はフロートで遮られ近づけなくなった。これにより海を遮断し、ドローン規制法で空を遮断した。沖縄県もメディアも市民も、辺野古新基地建設工事の進捗状況や赤土流出の有無等を把握することができなくなった。そしてさらに、「重要土地規制法案」が地上における市民の自由な活動を遮断しようとしている。

4月2日地元紙に、沖縄ドローンプロジェクト撮影の辺野古沿岸部の写真が2枚掲載された。ドローン飛行禁止制限を受ける以前の写真と規制法施行後に米軍の許可を得て撮影されたものだ。その違いは一目瞭然。知る権利から市民が遠ざけられている現実が如実に示されている。


小型無人機飛行禁止法で指定されている米軍キャンプ・シュワブの周辺区域から撮影した画像。辺野古崎近くのN3護岸周辺で埋め立て工事が進む=1日、名護市辺野古(沖縄ドローンプロジェクト提供)

(2021年4月2日琉球新報より)


小型無人機飛行禁止法ができる前にドローンで撮影された辺野古崎付近の工事の様子=2019年3月25日撮影(沖縄ドローンプロジェクト提供)

(2021年4月2日琉球新報より)


◇本部(もとぶ)半島の土砂も同じ◇

4月9日、辺野古有志の会とティダの会が沖縄防衛局へ申し入れをした。

 申し入れ文では、<‥‥‥現在、辺野古側埋め立て工区に投入されている本部半島の土砂も同じです。本部半島でも日米両軍の戦闘がありました。‥‥‥いまだ遺骨が帰らない住民や学徒隊、護郷隊の遺族が北部にもいます。‥‥‥><沖縄に、新たな軍事基地を造るために利用していい土地も海も土砂もありません。>と述べた上で、<沖縄戦戦没者の遺骨が混じる糸満市、八重瀬町地域をはじめとした沖縄全域からの土砂採取(計画を含む)をやめ、辺野古側海域への土砂投入を即座に中止してください。>と訴えている。

 沖縄戦戦没者の遺骨が残っているのは沖縄島南部だけではないのだ。戦後76年、国内に眠る遺骨さえ収集・追悼できていない政府が新たな戦争の準備をしている。

                    (5月オピニオン/ニュースレター15号掲載) 

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