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コラム 沖縄のいま⑶        

「ドローン規制法」対象拡大 「知る権利」侵害




         琉球新報 2020年8月8日の3面


 防衛省は8月7日、ドローン飛行を禁止する対象施設を拡大し、在日米軍施設15カ所と自衛隊施設14カ所を追加指定した。

 対象施設とその周辺300㍍でのドローン使用が原則禁止される。飛ばすには、あらかじめ基地司令官の「同意」を得たり、警察や海上保安庁に通報しなければならない。実施は米軍施設が9月6日から、自衛隊施設は8月17日から。

 河野太郎防衛相は7日の記者会見で、「知る権利は大事だが、ドローンがテロなどにも使われている懸念もあるので、そうしたことを考慮しながら指定した」と述べた。昨年、米海兵隊太平洋基地は沖縄紙の取材に対し、取材目的を含めたドローン飛行を原則許可しない考えを示している。(琉球新報8月8日社説)


 新たにドローン飛行が禁止されたのは以下の施設。

 沖縄の6施設が含まれる。

【米軍】車力通信所、キャンプ座間、経ヶ岬通信所、厚木基地、横須賀

基地、佐世保海軍施設、立神港区、三沢基地、横田基地、嘉手納基地、岩国基地(水域含む)、キャンプ・シュワブ(水域含む)、キャンプ・ハンセン(水域含む)、キャンプ瑞慶覧、普天間飛行場

【自衛隊】旭川駐屯地、帯広駐屯地、神町駐屯地、相馬原駐屯地、岩国航空基地、大村航空基地、千歳基地、三沢基地、百里基地、浜松基地、小松基地、築城基地、新田原基地、那覇基地


 「ドローン規制法」は昨年5月に改正され、①飛行禁止対象施設に防衛大臣が指定する防衛関係施設を追加、②2019ラグビーワールドカップ、2020年東京オリンピック・パラリンピックの関連施設上空での飛行が禁止された。この時、沖縄では辺野古新基地埋め立て現場のドローン撮影ができなくなるとの懸念があった。その懸念が現実となった。

 沖縄のメディアは以前から米軍基地での事故の際、ドローン撮影によって現場の状況に迫ってきた。日米地位協定によって基地への立ち入りができないからだ。例えば、実弾射撃訓練が行われるキャンプ・ハンセンでは、その影響で年に数回山火事が起きる。火災発生現場やその範囲を米軍が親切に教えてくれるわけではない。ドローン撮影によってその状況が把握される。火災で山肌はむき出しになり、赤土流出につながる。また、キャンプ・シュワブ沿岸の辺野古新基地建設工事の進捗状況を知ることもドローン撮影が頼みの綱だ。近くの豊原の丘から望遠レンズで撮影しても、埋め立て範囲が正確に把握できない。俯瞰することにより全体像が分かる。メディアも工事を監視する市民も、ドローン撮影によって現状を伝えている。


 キャンプ・シュワブの臨時制限水域は2014年7月1日、沿岸から50㍍だった常時立ち入り禁止区域(「第1水域」)を辺野古工事のために沿岸から2㌔㍍に拡大し、日本側が共同使用すると閣議決定したものだ。制限水域は一挙に561.8㌶に拡大された。辺野古新基地工事のための恣意的な拡大だ。沖縄防衛局は、拡大した水域にフロートを張り、海上保安庁がカヌーによる市民の監視行動を規制している。防衛省にとって、新基地建設に反対する市民のカヌーやドローン撮影が「テロ行為」に匹敵するのだろうか。

 沖縄弁護士会(村上尚子・会長)は8月14日、「辺野古新基地建設工事が進められている米軍キャンプ・シュワブ沿岸の提供水域を対象防衛関係施設として指定したことに抗議し、同指定の撤回を求める会長声明」を発表した。

 埋め立て工事が進むキャンプ・シュワブの水域もドローン禁止区域に指定したことは、辺野古の埋め立てに反対する大多数の県民の意思を封じるものだ。

 沖縄だけの問題ではない。軍事が優先され、メディアの報道の自由を奪い、市民の「知る権利」を侵す。メディアと市民が共同して防衛省に取材・報道目的のドローン飛行を認めるよう交渉し、民主主義の基本である「知る権利」を守らねばならない。

                        (8月オピニオン/文責:小原悦子)


新緑に覆われる恩納岳。一部では米軍演習による火災発生で山肌がむき出しになり、低木や草などしか生えていないのが分かる=2017年3月20日(小型無人機で撮影)。

(琉球新報2020年8月8日より)

名護市辺野古の新基地建設の現場。仕切りの護岸を境に、写真手前は埋め立て区域2―1、奥は区域2=25日午前(沖縄ドローンプロジェクト提供)(琉球新報2020年3月27日より)





琉球新報 2020年8月8日の1面





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