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《コラム》沖縄のいま⑵

「イージス・アショア」配備撤回を巡る沖縄の眼

  河野太郎防衛相は6月、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の陸自むつみ演習場(山口県)と新屋演習場(秋田県)への配備撤回の理由として、「コストと期間を考えると合理的な判断とは言えない」からと述べた。迎撃ミサイルを発射した際、ミサイル上昇後に切り離される「ブースター」を演習場内に確実に落とす技術の改良には2200億円以上、12年程度を要すると説明した。


「イージス・アショアをやめるなら辺野古もやめろ」

 防衛省は大浦湾側の軟弱地盤改良工事のため、設計変更を沖縄県に申請する際、9300億円の費用と運用開始まで12年間を要するとした。当初の計画から大幅に予定が狂っているにもかかわらず、政府は普天間基地の危険除去には「辺野古が唯一の選択肢」だと言い続ける。沖縄県民からすれば、「イージス・アショアをやめるなら辺野古もやめろ」となるのは当然だろう。

2018年沖縄県は辺野古埋め立て承認を撤回した際に、工事費用を2兆5500億円と試算した。完成も危ぶまれる辺野古新基地建設に巨額の血税を投入し続ける合理的理由はなになのか。政府は沖縄県民のみならず納税者すべてに説明する義務がある。





先島に配備のミサイル、ブースターはどこに落ちる?

 イージス・アショア配備撤回の波紋は別の問題を明らかにした。石垣島、宮古島、奄美大島に陸上自衛隊の地対艦ミサイル、地対空ミサイルが配備される予定で、工事が進められている。

 先島に配備予定のミサイルにも発射後切り離される「ブースター」が付いている。6月19日野党国会議員らでつくる「沖縄等米軍基地問題議員懇談会」で防衛省担当者へ質疑が相次いだ。地上イージスは固定されているが、地対艦・地対空ミサイルは車両に搭載して島中を移動し、発射される。ブースターはどこに落ちるか分からない。

 ブースター落下の危険が宮古、石垣、奄美の住民に一言も説明されていないことも問題だ。防衛省は宮古島で、物資倉庫と偽って弾薬庫を造成した前科がある。嘘偽りのない説明は最低限のルールだ。

(写真は宮古島、石垣島で配備予定の12式地対艦ミサイル/防衛省資料)【出典:琉球新報6月19日】



米軍基地で新型コロナウイルス爆発的感染

 在沖米軍基地で新型コロナウイルス感染が多発している。玉城知事は7月11日、在沖米四軍調整官と電話会談し、了解を得て、米軍側の要請で非公開としていた感染者数を公表した。7月1日から11日の間、複数の在沖米軍基地で65人の感染が確認されている。しかし、感染経路や感染者の接触状況、移動で沖縄へ入ってくる人数など詳しい情報は伝えられていない。

 日本政府は米国を入国拒否の対象国としているが、米軍は対象外だ。米軍関係者は日米地位協定により入管法の適用を除外される。日本の検疫も受けない。

7月から8月は米軍の移動時期だという。米軍は米本国等から移動してくる米兵らを北谷町の民間ホテルを借り上げて一時隔離している。沖縄本島の14.7%が米軍基地だ。移動者の一時隔離所を基地内に設定できないとはどういうことか。

7月4日は米国の独立記念日だった。若い米軍人らが大挙して基地外でバーベキューなどの催しに興じた。米軍関係者の中には基地の外に住まいする者も多い。しかし、どこに何人が住んでいるのか、その情報はまったく地元に知らされない。ここでもまた、日米地位協定の問題が県民の命を脅かしている。       (7月オピニオン/文責:小原悦子)

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