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「資料集:富山市長選自民党候補者          予備選報道と地方紙」を制作して


                              堀江節子

 今年4月に行われた富山市長選の自民党公認候補者選定にあたり、自民党市連と旧町村6支部による選考委員会は、2021年の年始から1月31月まで党内立候補希望者6名による一連の予備選を行った。


  (021年2月1日1面トップに掲載された自民推薦候補者決定の名前と写真

    『市長が決まった』と思った人もいた!)


 北日本新聞社は、頻回に、広い紙面を使って予備選を報道した。地方紙が、一政党である自民党内部の候補者選定について過剰と思われる報道をしたことが選挙に与える影響を、当事者である北日本新聞社と市長選候補者4人に聞いた。新聞社からは「(自民党は)県内政界の最大勢力であり、富山市議会でも多数を占めています。その方向性は市長選の流れを大きく左右しますし、市の最高権力者である市長を選ぶ過程や動向を追うことは権力監視の点でも重要だと考えています」等の回答が届いた。自民党以外の立候補予定者(自民党公認候補は無回答)からは、総じて予備選報道は自民党に有利に働いた、市民目線の記事が必要、予備選においても公平中立といった配慮は必要だとする回答があった。

 これまで候補者、とりわけ当選見込みが低い候補者の選挙報道に関するとらえ方や意見が表に出ることはなかったが、予備選報道を通じて候補者が批判を述べる機会を設けた意味は小さくない。しかも、報道する側である県内マスコミ各社に「資料集」を配布することで問題点を伝えることができたのは、反応のいかんを問わずそれなりの意味があったと考える。

7月4日の高岡市長選では、4月に自民党高岡市連は公募に申請した3人から推薦候補の選考会を開いて1人を選んだが、3人がともに立候補の意思を示し、共産党が立候補を断念したので、自民3人での選挙戦になる。北日本新聞は3人を何度も“公平”に紹介しているので、高岡市長選の場合でも、自民以外で後から立候補する人がいるとすれば紙上での宣伝においてかなり不利である。


~当会メンバーのアンケート回答から~


 下記のようにメンバーへのアンケートを行った。(質問5)の予備選報道から明らかになった、自民党政権や地方首長・議会などの報道がもたらす問題点と提言をもって、まとめとしたい。


1.予備選に関する、立候補者へのアンケートとその報告について

・予備選で自民党(立候補希望者)の考え方を知ることができたが、予備選は自民党内部のことであり、他紙のように結果を報じるだけでよいという意見が一般的だった。一方、北日本新聞を毎日読んでいても、資料集を見なければ気づかなかったという人がほとんどだった。

・自民党の広報紙と見間違うような報道をしているのに、新聞社幹部にその意識がなく、社内からも意見が出ないとすれば、問題は深刻だ。

・山田健太さんの特別寄稿では、予備選も含めて選挙といえるので、メディアは公示中でなくともそれに準じた規制を自主的に課すのが妥当としていた。

・北日本新聞は、予備選報道を権力監視の点でも必要だとするのであれば、巷で出来レースといわれていたので、党内での調整過程も報じてほしかった。

・シェアの大きい地方紙に「政治的中立」があるがごとき幻想を持たないことが肝心といえる。


2.北日本新聞以外の新聞を取っている方は、予備選についてどの程度知っていましたか。

・予備選は知っていたが、北日本新聞を購読していないので、資料を見て初めて紙面の状態を知った。

・北日本新聞と全国紙一紙を購読しているが、全国紙は報道スペースが小さいため、ほとんど報道していなかった。


3.テレビ放送で気づかれたことはありますか。

・NHK等でも放送していたし、街頭での街宣の場にたまたま通りかかったこともある。放送を見て、公共電波を使って自民党の宣伝をしていると思った。また、一瞬、もう本選が始まった?と錯覚した。異常な選挙戦だったと思うが、それだけ自民党も必死に戦略を練ったと思う。

・6時からの地方局のTV報道には、公共の電波を使って報じる意味があるのか疑わしいものもある。政治についても良識ある報道をしないと、テレビ、新聞離れを促すことになる。


4.予備選を経ての、市長選報道でなにか気づかれたことはありますか。

・2月1日の1~2面を大きく使った報道は、市長が決まったような印象を与えた。

・自民党公認候補者が決まった時点で勝負はついていた。ダブル選挙にしては投票率が低かった原因の一つと考えられる。

・予備選によって自民党は圧倒的優位に立ち、その効果か、政活費を不正使用した議員も当選して議席数を増やした。

・自民党籍で名乗りを上げた人の中に、予備選がなければ本選挙に立候補した人がいたはずで、有権者にとっては、結果として選択の機会を失うことになった。


5.地方紙における報道の問題点と提言

・自民党は政権与党であり、富山県では国、県、市町村議員の多数が自民党所属のため、政治面では自民党に関する情報量が圧倒的に多く、自民党の主張が常に主流化されている。

・沖縄県では、米軍基地問題で国と県の利益が相反することが度々ある。その際、地元紙2紙は、県や住民の側に立つ視点で紙面を構成しているように思う。また、県の施策と住民の利益が相反することも当然ある。その際にも、地元紙は住民の側に立って書いているように思う。

・ジャーナリズムは本来、公平・中立の立場で弱者に寄り添った報道をすべきであり、行政や時の権力者の広報マンであってはならない。地方紙でもキラリと光る記事を掲載しているところもあり、読者もマスコミを育てることを考えなければならない。

・メディアに「権力に対する批判精神」を求めることは幻想に近い。

・報道は公正公平を旨とし、むしろ少数者の動きを意識的に取り上げることでバランスが取れるものと思う。現状に追随していては、あるべき姿が実現しません。あるべき姿とは、すべての人の人権と幸福追求の権利が保障される、平和な国・世界の実現です。


◆新聞キャプション

2021年2月1日1面トップに掲載された自民推薦候補者決定の名前と写真↓

『市長が決まった』と思った人もいた!

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