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「対話篇 原発CM」なんだかなあ…

電気事業連合編 原発CM 〈対話篇〉(文字おこし)

≪出演者/石坂浩二…「環境にやさしいエネルギーといえば何を思い浮かべますか。」

若い女性…「太陽光とか風力とか」

石坂…「そう、地球温暖化を抑制するためには再生可能エネルギーの拡大に加え、火力の効率化や、発電時にCO2を出さない原子力を、安全の確保を大前提にバランスよく組み合わせることが必要だと考えます。」…≫ 




 画面には最後の方で電事連あるいは政府が考える2030年のエネルギーミックスを表した電源別のエネルギー構成比の円グラフが映し出される。原発20-22%

(なおこのCMは電事連のHPでも見ることができます https://www.fepc.or.jp/movie/ )

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 これは民放各局のテレビで2月から3月にかけてよく目にした原発CM。今回はこのCMについて考えてみた。

 日本のテレビCMはよく芸能人を起用したりして企業名や商品名を覚えてもらうイメージ広告が多い。有名で一見知性的で信頼感のある芸能人が出るCMだと、その穏やかな語り口とその人が持つイメージにとらわれCMの内容に疑問を持たず、いつの間にか聞き入れてしまいがちになる。この原発CMもそれを狙ったイメージ広告の一つに違いない。このCMの〈商品〉は「原発を前提としたエネルギーミックス」。

 いくつかの疑問点を挙げてみる。


環境にやさしいエネルギーとして取り上げている「発電時にCO2を出さない原子力」というフレーズ


 この説明には2つの問題点がある。

 一つは、原発はフクシマ原発震災でも証明されたように重大な事故が起きると放射能で汚染された広範な地域を生み、人々が生活できない地域ができる。しかも平常時でも多くの被ばく労働者を生み、日常的に放射能物質を原発施設の外に排出し、発電後には大量の放射性廃棄物(核のゴミ)を残す。何万年もの厳重な保存期間が必要とされる高濃度核のゴミにいたってはその処理方法さえ未確定の日本の現状を知るならば、原発は決して「環境にやさしいエネルギー」とは言えない最悪の環境汚染源の一つなのだ。


 もう一つは、日本の原発の過半数を占める沸騰水型原発(BWR)では放射能を帯びた蒸気の漏れを防止するため原子炉の起動・停止時に重油を燃料とする補助ボイラーで発生させた蒸気でシールしており、発電時でもCO2を排出していることは明らかとなっており(注1)、CMの中で語られる「発電時にCO2を出さない」という言い方はできないのである。


2030年のエネルギー構成比「原子力発電20-22%」


 この数値は政府のエネルギー基本計画の中の発電方法の組み合わせ(エネルギーミックス)で考えられている、原発が供給する電力として見込まれている数値であるが、下限の20%であっても、①30年まですでに廃炉が決定した原発を除いた、現在ある原発33基すべてが再稼働し、②40年の運転期限を迎えるすべてが60年運転を許可され、③建設がストップしている大間原発と島根原発3号機が完成するといった3つのすべての条件が必要(注2)であるが実現は容易ではないという評価が大方だ

 以上のことを踏まえれば、3.11原発震災という、起こしてはならない原発事故を起こした電力業界が、再びこのような原子力発電についての不正確な情報や、実現不可能な予測をもとに作った原発CMを民放を通じて流していいものか、はなはだ疑問だ。


 加えて言うならばテレビ広告収入が大幅に増えない近年、各民放にとっては貴重な収入源としてこの電事連提供の原発CMを流すのであろうが、3.11原発震災後原発ムラの一角として批判されたマスコミの一つであるテレビメデイアはなおのこと自社で放映する原発CMについて流していいかどうかについて、より厳格で慎重な広告審査を行うべきだろう。

                       (3月Opinion/文責:大島俊夫)

(注1)参考資料 末田一秀「知られざる原子力からCO2排出実態『発電時にCO2を出さない』は虚偽だった」~資料アクセス先↓

(注2)参考資料 

大野輝之著「原子力発電の凋落」(世界2019年7月号P111)、

高野洋著 「連載コラム 自然エネルギーアップデート/原子力20-22%は実現可能か」

https://www.renewable-ei.org/column/column_20150521.php

(補足)2008 年11 月に、社団法人日本広告審査機構(JARO)が同電事連が雑誌に掲載した広告に関連し、原発が発電時にCO2 を出さないというだけで「クリーン」であるという表現は不適切という裁定を電事連に出しているのも確認しておきたい。(「原発はクリーン」不適切と裁定 電事連広告にJARO 裁定」(西日本新聞09 年1月30日等報道)




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