9月26日の毎日新聞のスクープとそれに続く他紙を含む一連の報道により、かんぽ不正販売を告発するクローズアップ現代+(昨年4月24日放送)の続編放送(昨年8月放送予定)が日本郵政グループの抗議・圧力により延期されていたことが明らかとなった。(続編は今年7月に放送された。経緯の詳細は別紙を参照)
このかんぽ不正販売報道続編延期問題には以下の6つの問題点がある。
⑴続編番組が延期されたことで視聴者の知る権利が侵害され、かんぽ不正販売による被害が拡大したこと。
⑵「放送番組は法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉されない」とする放送番組の編集の自由を定めた放送法第3条違反の疑い。
⑶日本郵政グループによる申し入れを受けて,NHK経営委員会(石原経営委員長)が上田NHK会長に対しガバナンス(統治)体制の強化するよう厳重注意したが,その意味するところは「NHKの執行部が番組編集に関与して政治権力に都合の悪い内容をあらかじめチェックせよということ」(注1)であり、経営委員長の番組制作の介入禁止を定めた放送法第32条違反の疑い。
⑷しかも、その上田会長に厳重注意を行った経営委員会の議事録には、厳重注意についての議事録がなく(毎日その他各紙9月30日報道)、経営委員会の議事録作成義務を定めた放送法第41条違反の疑い。
⑸石原経営委員長に関しては、日本郵政からの不当な抗議圧力の防波堤になるどころか、自ら放送法違反と思われる行為をし、公共放送NHK放送の独立性と自律性を損ねてしまったNHK経営委員長としての適格性が疑われる問題。
⑹以上の問題を防止できなかった、経営委員会全体の問題と番組制作者側の問題。
なお、今回の問題で注目したいのは、NHK職員の制作費使い込みの問題発覚後07年放送法改正時に経営委員会の権限に加えられた放送法29条二の「役員の職務の執行の監督」条項である。放送法の逐条解説では、「あくまで経営職務執行の監督に限定されると解釈」(注2)されているものの、今回は「番組制作職務の執行監督まで拡大」(注2)され、その条項を利用する形で経営委員長から会長への厳重注意が行われたと思われるからである。政治的に決まっていく経営委員により構成される経営委員会を通じての《政治によるNHK支配》が、あらたな道具(放送法第29条二)を手にしたことで着実に進行し、強化されている実情の一端が明るみになったのも今回の問題ともいえそうだ。
( 11月Opinion/ 文責:大島俊夫)
(注1)出典:後藤春夫「崩壊するNHKの自主自律」マスコミ市民11月号p55
(注2)出典:後藤春夫「崩壊するNHKの自主自律」マスコミ市民11月号p56
(参考資料)・かんぽ不正販売報道続編延期問題を伝えた新聞各紙
※問題の経緯の動向一覧表は「NHKとメデイアを考える会 兵庫」より提供
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