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富山市のコンパクトシティ政策を     新聞各紙の切り口から考える(その1)


田尻繁

 4月の富山市長選・市議選のダブル選挙の告示を前に、新聞各紙はそれぞれ連載特集や署名記事を掲載した。旧市時代から市町村合併を経て19年間の森雅志前市長がもっとも力を入れて推進したコンパクトシティ政策について、各紙の切り口から考えてみる。

1,コンパクトシティ政策はトリクルダウンか…(朝日新聞)

 北日本新聞は連載特集「県都ミライ-富山市ダブル選」で4月15日に、森市長(当時)のコンパクトシティ政策の考え方を次のように要約している。「行政は都市経営。…富山駅や中心市街地の集中投資で地価を上げて税収増につなげ、福祉の充実や中山間地など不採算の分野に充てる。これがコンパクトシティ政策の根幹をなす考え……『人口減少の時代では平準的に予算を使っていては全体が地盤沈下する。どこかで税を稼がないといけない』(森氏自身の発言)」。

 北陸中日新聞は7日に「北陸絵図 コンパクトシティ推進20年富山市どう変わった」を掲載。「中心市街地(西町周辺)で行われた主な11事業の総事業費は約765億円…うち国・県が約212億円、市が約85億円を負担」「総事業費のうち約39%を税税金で賄った」ことを指摘したうえで、「一連の成果として森市長が強調するのが、税収増と人口の転入超過」「中心市街地からの固定資産税と都市計画税の合計額は伸びは2012年度に比べ2020年度は10%増。額にして約6億円の増」と事業費、税収、人口の推移を数値で示した。

 国・県・市があわせて約300億円の税金投入にたいし、中心市街地での税収増が年間6億円では「費用対効果」はあまりにも少ない。市の負担約85億円だけを取り戻すのにも14年間もかかる。さらに同紙は「市長は、市中心部の集中投資で得た税収を周辺部に還元するとしているが…人口の変化は、地域によって差が出ている…大型ショッピングセンターが立地し、宅地化が進んだ旧婦中町だけが大幅に増加。旧富山市は微減、周辺の旧町村は減少率は二桁だ」と掲載。コンパクトシティ政策が進められた期間には中心部での大きな人口増加は見られなかったし、周辺部の人口減少が顕著であったことが明らかだ。

 朝日新聞は10日の署名記事「コンパクトシティー政策 県都 どう変えた」で「コンパクトシティー政策は、中心部の集中投資で得られた成長を、中山間地に環流させるトリクルダウン的な面がある」と指摘。

 トリクルダウンとは「企業や富裕層を優遇することで投資や消費を拡大し、GDPが成長することでその恩恵を社会全体に広がる」という新自由主義の経済理論だ。1980年代に英国サッチャー政権、米国レーガン政権で失敗。安倍政権もトリクルダウンを提唱したがデフレから脱却できず、貧富の格差が拡大している。


                       (朝日新聞2021年4月10日)


2,ライトレールと南北接続は「森氏のレガシー(政治的遺産)」…(北日本新聞)

「全国に誇るコンパクトシティ政策」…(富山新聞)

「恩恵は沿線住民に限られている」…(北陸中日新聞)

 北日本新聞の連載特集は7日に「利便性高め脱車依存」の見出しで,「国内初の本格的LRTとして注目を浴びたライトレール、市内電車環状線に続く南北接続は『コンパクトなまちづくりの一つの到達点』(森雅志市長)……退任する森氏のレガシー(政治的遺産)といえる」と森市長を大きく持ち上げている。

 富山新聞は連載特集「県都の行方」で、7日に「大雪時の検証不可欠」としながらも大雪時の除雪対応などで

「全国に誇るコンパクトシティ政策のブラッシュアップ」を次期市政に求めている。

 一方、北陸中日新聞は連載特集「県都の岐路」で9日に「利用増も車依存残る」の見出しで「(路面電車等の)恩恵は、鉄軌道沿線の住民に限られている。2005年の合併前の旧町村など中山間地では公共交通の利便性は低く、駅やバス停が徒歩圏にない空白地域も残る……2019年の市民意識調査によると、8割以上の市民の普段の移動手段は車と回答。…7割以上が(公共交通を)『ほとんど利用しない』『年に数回利用する』と答えた。…市民の多くは車依存の生活……高齢化による交通弱者の増加は進み…南北接続で一段落した市の交通政策は、次の方向性を打ち出す必要がある」と結んでいる。

 なんと7割以上(約30万人以上)の富山市民にとって路面電車を中心とした公共交通整備という「森氏のレガシー」は、全く生活に無関係な政策だったことになる。 

           (北日本新聞2021年4月7日)

                      (富山新聞2021年4月7日)

         (北陸中日新聞2021年4月9日)

以下は、「Newsletter Citizen's eyes vol.17」(7月)に続く。

3,ハコモノを作っても人通りは戻らない中心市街地

4,各紙が報じる周辺部の実態

5,コンパクトシティ政策は「今だけ、ここだけ、自分だけ」の新自由主義の政策なのか

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